地域まるごといきいきブログ

連載企画「たかさんの独り言じゃけ」Vol.3

連載企画「たかさんの独り言じゃけ」Vol.3
.
.
満州と外蒙古の国境線をめぐっての日本軍とソ連軍との紛争、ノモンハン事件から今年で80年である。

この事件を扱って、昨年の8月15日にNHKで放映され好評を博した「ノモンハン 責任なき戦い」の新書版が、昨今発売された。

日本軍の無謀な作戦に出て、ソ連の大火力に負け、日本側だけで2万人を超える死傷者を出した。

新書の冒頭には、101歳の元兵士が怒りに震えて語った「ノモンハンはまったく無駄な戦争だった(中略)あそこで無駄に戦死させたのは本当にかわいそうだ。腹が立ちます」との声を紹介している。

ノモンハンでの敗北は、陸軍が対ソ戦から南進政策へ転換を余儀なくされ、その後のアジア太平洋戦争の行方にも大きな影響を与えた。

この事件は村上春樹の「めじまき鳥クロニクル」のモチーフにもなった。

村上は生き残り兵士に「ノモンハンででたらめな指揮をやった参謀たちは、あとになって中央で出世した。

奴らのあるものは、戦後になって政治家にまでなった。しかしその下で命をかけて戦ったものたちは、ほとんどみんな圧殺してしもうた」と語らせている。

この新書でも、やくなく撤退した現場の将兵や下士官、捕虜になったものは自決を迫られたり、軍法会議で重い懲罰を受けたことが紹介されている。

その一方で幹部は、作戦を主導した関東軍参謀の辻政信のように、一旦は左遷されたが、すぐに陸軍中枢に復帰した。辻はその後、太平洋戦争のガタルカナルやポートモレスピーなどの主要な作戦を主導し、多くの犠牲者を出したにもかかわらず、戦後、責任を問われず、「政治家にまでなった」人物である。

責任を下に押し付ける当時の陸軍の組織構造が、今の日本の政治構造とそっくりなことに驚くばかりだ。